小太郎さんのいる日々

スキッパーキの小太郎さんと自堕落飼い主のどうということもない日々の記憶

先代わんこの思い出

実は我が家では、足掛け約40年にかけて4代犬を飼い続けており、小太郎さんは5代目の犬になる。(正確には両親が結婚してから子どもが生まれるまでの間にも飼っていたそうなので、その犬を含めれば6代にわたる事になるのだけど)父の好みで先代まではずっと柴犬、もしくは日本犬の雑種で、スキッパーキのような洋犬を飼うのは小太郎さんが初めてだったりする。

先代の柴犬は父によってリョウと名付けられたが、その後あーちゃんという愛称で呼ばれるようになる。幼い頃、冬場になるとストーブの前に座り込んでしきりに「あー」とか「うー」とか独り言を言ってたことから付けられたもので、僕と母はもっぱらその愛称で呼んでいた。

柴犬には種固有の性格というものがなく、生活環境によって性格に大きな違いが出ると聞いたことがあるが、そのせいだろうか、あーちゃんはとにかくおっとりとした性格で、子犬の頃から生涯、良く眠る犬だった。まあ、犬は寝るものと言ってしまえば確かにそうだろうけど、彼の場合は特にその傾向が顕著だった。夢を見ているのか、しばしば寝言のように唸ったり走るように寝ながら足を忙しなく動かしていた。そんな姿を見るにつけ、もしかすると彼にとっては夢の中の生活こそが現実であり、こちらの飼い主家族は彼の夢の中の存在に過ぎないのではないだろうか……そんな想像をせずにはいられなかった。

あーちゃんとの散歩の途中、連れていた父が交通事故に遭ったことがある。幸い、父は周囲の人に助けて戴き、生命に別状はなかったのだが、助けてくれた方が危険と判断したらしく、あーちゃんをリードから離してしまった。

自由になったあーちゃんは、そのまま我が家へと走り、家の前で大きく吠えたという。その声を聞いた母が不審に思って玄関から顔を出すと、あーちゃんはとって返すように、事故現場に走りだしたそうである。慌てて後を追った母があーちゃんを捕まえたところに、今度は事故現場から犬を追ってきた人がその場に駆けつけ、ようやく母は事の次第を知ったという。

晩年は足に腫瘍ができ、それがすい臓に転移したことが死因になったようである。それでも約17年の生涯を全うして、最期はさほど苦しむこともなく逝ってくれた。飼い主に手をかけさせない、いい子だった。

小太郎さんを飼ってみて、初めて犬種による性格の差異というものを実感させられている。何かと立派だった先代と比較されてばかりの小太郎さんだけど、果たしてこれからどこまで成長してくれるだろうか……?