小太郎さんのいる日々

スキッパーキの小太郎さんと自堕落飼い主のどうということもない日々の記憶

「計算できる犬」を考えてみる

時折、テレビの動物特番などで『計算できる犬』というのを見かける。
主人が計算式を書いたフリップを見せると、犬が吠える回数で答える、
というやつだ。

犬は計算をしているのではなく、主人(もしくは出題者)が意識的、
あるいは無意識のうちに発している合図(手足や指の動き、表情の変化等)を
敏感に読み取るから回答できる……というのが普通正解とされているが、
さて、犬には本当に、計算する能力はないのだろうか?


犬がボードに書かれた計算式『1+1=?』の意味を理解するには、
まず、それぞれの記号の指し示す意味を知っている必要がある。
つまり『1』『+』『=』『?』それぞれが指し示す意味を、である。

それぞれの記号の意味が理解できるためには、
更にその下にそれぞれの意味を知る必要があることが分かる。

『1』とは数字であり、数を示すものであること、
『+』とは加算を意味すること、更には加算とは何であるかということ
『=』はその左右が等しいという意味であること。

つまり、犬が計算式に答えるためには、まずその計算式を理解できる
程度の言葉を理解していなければならない。言い方を変えれば、
犬が計算式を理解できるということは、その指し示す意味を言葉として
理解できるということであり、即ち、その犬は言葉を言葉として理解
している、ということになるだろう。

私は『計算できる犬が文章を読むことができる』という話を聞いたことがない。
それは、犬が言葉を言葉として理解していないからに他ならないだろう。

犬が言葉を言葉としては理解しない、ということに関しては
犬のしつけに関してよく言われる、ある事が証拠になると思われる。

『犬を叱るときには名前を呼んではいけない。
 叱りながら名前を呼ぶと、犬は自分の名前=叱られていると認識し、
 名前を呼んでも側に寄って来なくなるからだ』

これは犬のしつけに関して良く言われることである。
ここではその是非は問題ではない。
問題は、犬が自分の名前を自分の名前として理解しない、という点にある。

これが人間の子どもだったらどうだろうか?
ほめられる時も叱られる時も、同じ名前で呼ばれる。
そのことから、その子はその呼ばれた名前を自分を示す名前として認識するだろう。

しかし、犬は自分の名前をそれ単独では理解しない。
叱られる時に主人が発生する『自分の名前』を名前としてではなく、
その音や響きの言葉が発せられるとき、自分は叱られていると認識するのだろう。
それは自分の名前を単独の意味を持つ言葉(単語)としては認識していないことを
意味していると言えるだろう。

犬は言葉を理解しない。
よって計算式の意味を理解することはない。
即ち、犬は計算式を見て計算することはできない。

とするのが正解であるだろう。
(ただしこれは計算する能力の有無とは別問題)


……しかしまあ、なんとも味気のない結論ではある。
だから、自分は犬が言葉を言葉として理解できないことを
理屈として承知しつつ、毎日小太郎さんとお話をするのである(自爆